桑の生育にとっては、キセル貝が畑を耕し、土を活性化するというメリットがあり、桑の育ちやすい環境を創る共生関係にあるようです。桑は又が3つある木と書きますが、これは、春・夏・秋の3回、枝を切ることからきています。農家では蚕に、桑の葉を食べさせていましたが、枝は残ってしまいます。福島ではこの枝をもう一度畑にいれて肥料としています。それが腐って有機質となり再び桑の栄養になります。その中間にある腐葉土をキセル貝が食べているのです。無農薬、有機農法だからこそ、キセル貝は元気に育っているのです。キセル貝はわずかに残された自然から我々への素敵な贈り物なのでしょう。

 
 キセル貝は驚くほどの生命力を秘めた貝です。サザエやタニシが持っている蓋がないため、乾燥に弱い性質ですが、ちょっと日照りが続いたからといって、死んでしまうわけではありません。キセル貝は蓋を持っていませんが、かわりに粘膜を出して膜を作り、水分の蒸発を避けるのです。やわらかい土の中にアタマを深くもぐりこませ、次の雨を待つ。その生命力はなかなかしたたかだといえるでしょう。一見、干からびて死んでいるようでも、適度な温度と湿度の場所に置くと、また元気に角を出してきます。
 キセル貝は11月以降に冬眠に入り、集団で越冬します。一匹二匹では外敵に食べられることがあっても、何百匹も固まっていればどれかが生き残れるという自然の知恵なのでしょう。この越冬の時期がキセル貝の収穫に適した時期です。集まっているところを捕まえることができるからです。
 キセル貝は雌雄同体。オス・メスの区別は無く、すべてが卵を産みます。一度に生む卵は3個から5個ぐらいです。キセル貝は外敵から身を守るカラを最初から持って生まれてきます。長生きするものは10年も生きますが、平均すると5・6年ぐらいの寿命です。成長はゆっくりしていて、卵を産むようになるまで3年はかかります。
 自然の中での外敵はネズミです。しかし、畑にいるキセル貝にとって一番の敵は農薬と言えるでしょう。強い生命力を秘めたキセル貝も農薬を使う畑では生きていくことができません。ですから、キセル貝の飼育桑園では、農薬は絶対に使いません。安心してキセル貝が本来もっている生命力をぜひ、あなたの健康増進に役立ててください。